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李白

菩薩蠻

菩薩蛮 LiBai libai Li Bai li bai libo litaibo litaibai
平林漠漠煙如織,
寒山一帶傷心碧。
暝色入高樓,
有人樓上愁。


玉階空佇立,
宿鳥歸飛急,
何處是歸程,
長亭更短亭。


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菩薩蠻

平林 漠漠として  煙は 織るが如く,
寒山一帶  傷心の碧
(みどり)。
暝色  高樓に 入り,
人 有りて  樓上に愁ふ。


玉階に  空しく 佇立し,
宿鳥  歸り飛ぶこと 急,
何處
(いづこ)か  是れ 歸程ならん,
長亭  更に 短亭。

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私感註釈

※菩薩蠻:詞牌の一。詳しくは下記の「構成について」を参照。李白のこの作品と憶秦娥とは、黄昇によって「百代詞曲之祖」と言われたもので、詞としては最も早期のものの一である。この詞は見晴らしの利くところから遠くを眺め、霞む遠景、また見渡せる中景から、心に響いたことを詠った。


※平林漠漠煙如織:平坦な所に広がっている森林が遠くぼんやりと、靄(もや)が(恰も)布を織るかのように長く筋になって。 ・平林:平坦な所に広がっている森林。南唐・馮延巳は『鵲踏枝』で「誰道閑情抛擲久,毎到春來,愁悵還依舊。日日花前常病酒,不辭鏡裡朱顏痩。   河畔青蕪堤上柳,爲問新愁,何事年年有?獨立小樓風滿袖,
平林新月人歸後。」と使う。  ・漠漠:遠く遥かなさま。ぼんやりとして、とりとめがないさま。平らに連なるさま。暗いさま。ここでは、林が遥か彼方まで果てしなく広がっているさまをいう。 ・煙:かすみ。もやの類。 ・如織:(靄(もや)が)恰も布を織るかのように長く筋になっているさま。

※寒山一帶傷心碧:寒山一帶:秋の終わりの寒々とした山の辺り一面は、心を痛めさせるような青さだ。 ・寒山:晩秋から冬にかけての寒々として寂しい山。(なお、寒山寺のある江蘇省の地名も寒山だが、ここは、前者の意。) ・傷心碧:心を痛めさせるような青さの意。後漢末/魏・王粲の『七哀詩』三首之一に「西京亂無象,豺虎方遘患。復棄中國去,委身適荊蠻。親戚對我悲,朋友相追攀。出門無所見,白骨蔽平原。路有飢婦人,抱子棄草間。顧聞號泣聲,揮涕獨不還。未知身死處,何能兩相完。驅馬棄之去,不忍聽此言。南登霸陵岸,迴首望長安。悟彼下泉人,喟然傷心肝。」とあり、後世、晩唐/蜀・韋莊の『浣溪沙』「夜夜相思更漏殘。傷心明月凭欄干。想君思我錦衾寒。咫尺畫堂深似海,憶來唯把舊書看。幾時攜手入長安。」とあり、婉約詞に多く見られることば。

※暝色入高樓:暮色が高殿(たかどの)に迫っている。 ・暝色:暮色。夕方の気配。

※有人樓上愁:高殿の上で愁いている人がいる。 ・有人:とある人物。だれか。また、「有人-」(=連動文的な表現)では「…するところの人物」の意。 *第三者を指す場合があり、作者の場合があり、不定。

※玉階空佇立:玉(ぎょく)で造られた(ようなすばらしい)階(きざはし)にあてもなく佇めば。 ・玉階:玉で造られた(ようなすばらしい)きざはし。「玉…」は美称でもある。盛唐・李白の『
玉階怨』に「玉階生白露,夜久侵羅襪。却下水精簾,玲瓏望秋月。」とある。 ・佇立:たたずむ。後世、柳永の『蝶戀花』に「佇倚危樓風細細,望極春愁,黯黯生天際。草色煙光殘照裏,無言誰會憑欄意。   擬把疏狂圖一醉,對酒當歌,強樂還無味。衣帶漸�ェ終不悔,爲伊消得人憔悴。」とある。

※宿鳥歸飛急:鳥のすみかへ帰るさまが速い。 ・宿鳥:ねぐらである巣へ帰る鳥。 ・歸飛急:(鳥の)すみかへもどるさまが速いの意。

※何處是歸程:どこが(わたしの)帰るべき道程で。 *前出・「歸飛」及びここの「歸程」の「歸」とは、本来居た処(=ふるさと、古巣、自分の長らく住んでいる家等)へもどること。

※長亭更短亭:長亭、その向こうには更に短亭(…と駅亭は遥かかなたまでつながっている)(のか)。 ・長亭・短亭:宿駅。長亭は十里ごとに、短亭は五里ごとに置かれた。南宋・無名氏の『題壁』に「白塔橋邊賣地經,
長亭短驛甚分明。如何只説臨安路,不較中原有幾程。」とあり、後世、金・元好問は『出�キ』で「春閨斜月曉聞鶯,信馬�キ門半醉醒。官柳����莫囘首,短長亭是斷腸亭。」とする。

                   ***********





◎ 構成について:
  双調。 四十四字。換韻。全ての句が押韻する。押韻の平仄が入れ替わる。 韻式は「aaBB ccDD」。韻脚は「織碧・樓愁・立急・程亭」になる。「織碧」は第十七部(入声-k)。「樓愁」は第十二部の平声。「立急」は第十七部(入声-p)(「立」は「りふ」で-p韻、「りつ」は慣用音)。「程亭」は第十一部の平声。

    ○●○○●。(a仄韻)
    ○●○○●。(a仄韻)
    ●●○○。(B平韻)
    ○●○,(B平韻)


    ○○●●。(c仄韻)
    ●○●,(c仄韻)
    ●●○○,(D平韻)
    ○●○。(D平韻)

2001.6.20完
2007.3.22補
2014.4.23
     4.24



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